共有取得による遺産分割の注意点を理解しよう ~税理士が『共有取得』についてわかりやすく解説します~

こんにちは。

水戸の若手提案型税理士事務所の日下部税理士事務所です。

今回は相続の時に財産を分ける行為である「遺産分割協議」について共有取得をする場合の解説をしていきます。
被相続人の遺産は相続人間の合意があれば、基本的には誰がどの遺産を受け取るかを自由に決定していただいて結構です。
ただし、注意しなければならないポイントがいくつかあります。
今回はこの注意しなければならないポイントのうち、共有取得をする場合の注意点を解説していきます。

このコラムを読むと…

・共有取得とはどのようなことなのかを理解できる!
・間違った遺産分割のせいで無駄な税負担が生じてしまうことを回避することが出来る!

このようなことが理解できるようになります。なるべく簡潔に、7分程で読める内容にまとめていますので是非最後まで読んでくださいね。


共有取得とは?

共有取得とは、被相続人の財産を複数の相続人が共有で相続することを言います。
例えば被相続人の財産のうちに宅地があり、その財産を被相続人の子供2人で2分の1ずつ相続する状態などがこれに当たります。
そしてこのような「2分の1」などの各相続人が所有する割合を「共有持分」といいます。

 

共有取得が行われる代表的な原因には以下のようなものがあります。

・親の財産のほとんどが土地のみで、相続人が共有で相続しなければ不公平感がでてしまうから…
・誰が相続すべきかを申告期限までに決められそうになかったからやむを得ず…
・幼少期の頃からの思い入れがある土地だからなんとなく兄弟で共有で取得することに…

いかがでしょうか?「なるほど確かにそういうこともあるか・・・」と感じませんか?
「共有取得」の意義と「なぜ共有取得状態になるのか?」を確認していただいたところで、次は共有取得の問題点を確認してみましょう。

 

共有取得の問題点

共有取得を行うと、その財産を維持・管理・処分する権利は共有者全員にあることになります。
そのため、例えば固定資産税の納税は共有者がそれぞれの共有持分に応じて納める必要がありますし、
(※持分に応じた納税がされないと、共有者間で贈与が行われたとされる場合もあります。)
その財産を利用するためには共有者全員の合意が必要になるのです。
ここで、共有者のうち誰か1人が急にお金が必要になった場合に、共有取得した土地を売却しようとしたら、どのようになるでしょうか。

結論は、残りの共有者が土地を譲渡することに合意してくれない限り、売却ができないのです。
共有取得は維持・管理・処分する権利が共有者全員になるため、共有者のうち誰か一人でも「売りたくない!」と思ったら
処分することが出来なくなってしまうのです。

さらに、共有取得した相続人らもいずれお亡くなりになり、その次の世代へと所有権が移っていきます。
すると、当初は父親が単独で所有していた土地が、相続人である子供ら(兄弟関係)で共有取得され、
最終的に孫ら(従弟関係)で所有することになります。

兄弟よりも関係が希薄である従弟間で一つの土地を維持・管理・処分することは大変なことです。
このように共有取得は所有関係が複雑化してしまうリスクがあるため、安易な共有取得は避けた方が良いでしょう。

共有取得でも問題がないケース

さて上記により安易に共有取得をすべきではないことが分かりました。
しかし、一定の場合には共有取得で相続して問題ない場合や、是非共有取得すべきと考えられる場合があります。
最後にこの共有取得して問題ないケースをご紹介します。

① その共有財産をすぐに売却する予定がある場合

共有取得の問題点とされた「合意が無ければ売却ができない」とは、
言い換えると共有者全員の合意があるならば売却が可能であるということです。
そのため一旦共有取得をしておき、それを近々売却することについて
あらかじめ共有取得者間での合意が取れているのであれば共有取得後の売却困難性の問題は解消されます。

さらに、相続により取得した財産を売却する場合、取得費加算の特例措法39  相続財産に係る譲渡所得の課税の特例が使えるため、
所得税負担を一定額減少させることが可能です

「地積規模の大きな宅地の評価」を適用する場合

一定面積以上の広い宅地は、相続税申告における財産評価において
『地積規模の大きな宅地』として評価額を減額することが出来ます。(財評通20-2 地積規模の大きな宅地の評価
相続した土地がこの規定の適用を受けられるかどうかを判定する基準は、

   ①分筆せず複数の相続人が共有取得した場合  :共有取得の対象となっている宅地全体の面積で判定
   ②分筆してそれぞれを各相続人が取得した場合 :各相続人が取得した宅地を別々に判定

することになります。
そのため共有取得であれば同規定の適用を受け相続税評価額を引き下げることが可能であったのに、分筆したことで同規定の適用を受けられなくなり、
結果的に相続税が多額になるというケースがあります。
地積規模の大きな宅地に該当すると、相続税評価額を20~30%弱引き下げることが可能ですから、十分に検討した上で分割協議をすべきでしょう。

③ 親子間で共有取得する場合

例えば父親の土地を相続により母親と長男で共有取得する場合を考えてみると、
一般的には長男より母親の方が先に亡くなるため、母親の相続時に長男が母親の持分を相続することとしておけば、
その時点で長男が単独で土地を所有することができ、将来的な「共有持分による所有権の複雑化のリスク」は少なくなるものと考えられます

また、母親の財産状況によっては、このように段階的に相続することで父親・母親それぞれの相続(1次相続、2次相続といいます)でのトータルの相続税負担額を抑えることも可能です。
但し、この場合には母親の相続時に他の相続人から母親の持分を相続したいと言われる可能性もあるため確実に相続できるよう母親に遺言書を作成してもらうのがよいでしょう

 

いかがでしょうか。今回は、相続時の遺産分割における「共有取得」について解説しました。
遺産分割のその後のことをしっかりと考え、後になってから「しっかり対策をしておけばよかった…」というようなことにならないようにしてくださいね。
実際の相続では、遺産分割における遺留分侵害に対する対応や相続税負担など、専門的な知識が必要な箇所が多々あります。
全てを自分一人で理解しようとするのは相当根気が必要なので、不安なことがある場合は是非相続税に詳しい税理士にお尋ねください。

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